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第13回犬を愛した

北薩摩にある臥龍梅で有名な藤川天神の一隅に、空を見上げたたくましい日本犬の銅像がある。銅像の下に由来があり「ツン」と名前がある。明治7、8年ごろに藤川天神に参詣した西郷は、虎毛の左尾の牝犬で兎狩りの逸物であったツンを欲しいと言い、仲を持った三原隼太には乗馬を持ち主の前田善兵衛には金二十貫を贈った。
西郷は犬好きで上野の銅像は犬を連れており、犬を愛する人の面影を伝えている。いつも四、五匹の犬を飼っていて狩りに連れて行っていた。毎朝、起きると庭で犬に語りかけ毛をなでてやり、食事も犬から先にして後から自分は食べるほどだった。
最後の狩の旅となった小根占には明治八年から三回ほど訪れ、毎日犬に兎を追わせて狩をしていた。数匹の犬が兎を追うときには、大きな体に似ず敏捷に崖を駆け上っていたという。
京都の祇園では犬を連れて行き、ウナギ飯などを共に食べたりしたこともあったという。征韓論(朝鮮使節派遣をめぐる閣議の論争)に敗れて鹿児島に帰り、武屋敷に住んでいるころは、飼っていた犬は三、四年間で十数頭にもなるというから凄い。

ツン「藤川天神」
ツン「藤川天神」