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第3回 気付きの人?~夜は悶々と更けてゆく~

「済まないけど、金貸してもらえんやろうか?」
「なんか嫌な予感がしたんだよな」
そう思いながら、思わず「なんで?」と聞いてしまった。(この時点でアウト?)
すると男は、マシンガントークのように話し始めた。
「どうも、昨日若い兄ちゃんに財布の金を盗られてしもうたようなんだ。しかも野宿用のテントが破けてしもうて・・・。そこでさっき話した友達から金借りることになってたんやけど、結局来んのよ。で連絡したら昼間の保健所云々の話で言い争いになっちまって、「もう金はよか!」って言ってしもうて。」
「だからって私に言わなくても・・・」と思っていると
「会ったばかりの男に金なんて、と思っていると思う。俺もこんな金貸してなんて事、誰にでもは言わん。でも、あんたは俺の目を見て話を聞いてくれた人だから。心で話を聞ける人だから。だからお願いしたいと思っている。」
男の話を聞けば聞くほど、ドツボに嵌っていく自分に気付きました。
「こいつ、日本1周と言いながら実はただの寸借詐欺なんじゃないかな?」
とか、
「これまでテントで寝泊りしてるとしたら、電動カートの充電どうしてたんだろ?」
とか、
「余裕があれば、すぐに貸せるけど手持ちもそんなにないし・・・」
などなど
ぐるぐるといろんな考えが頭をよぎりながら、
「なんでこんなやっかいな男に親切にしたんだろ?」
と今更ながらに昼間の親切を悔やみました。
「月曜日には、送金されるから絶対お金返すし、俺という人間も、本当に日本1周してる人間かどうかはインターネットや新聞を見てもらえばわかるし。なんなら、向こうに置いてるかばんの中の新聞切り抜き見てもらってもいいし。」
男の目を見ながら話を聞くうちに、何だか、私は男の素性とか、絶対返すとかそういう話がどうでも良くなってきました。
「とにかくこいつは困っている。貸してやるしかない。」
そう思ってしまいました。
「ちょっと待ってて。」
そう言うと、私はコンビニに走りなけなしの1万円を両替してきました。
そして男の所に戻ると、周りのスタッフに目立たぬように5千円札を小さく折りたたみ名詞と一緒に渡し、
「これでとりあえず今夜はどこか泊まれるでしょう。月曜日にお金が手に入ったら、この名刺の携帯に必ず電話してください。」
そう言いました。
男は、「ホント助かったわ。ありがとう。月曜日には必ず電話するし。」
そして、
「明日もここに来るの?」と私に聞きました。
「ええ、日曜日までここに居ますよ。」
そう答えると、
「分かった。明日もココに来るから。」
そう言うと男は、何度も礼を言いながら去っていきました。
お金を貸した瞬間までは「親切した!」という気持ちでなんかすっきりしましたが、
男が去ってしばらくすると、「男は本当に返すのか?」という思いが頭の中をぐるぐると回り始めました。
そして何ともいえない悶々とした夜が始まったのです。
親切心でお金を貸したことで、
「明日またここに来るということは、絶対にお金を返す気持ちがあるからだ。」
「いやいや絶対明日来ないし、やっぱり騙されてるかも。」
「40歳にもなって、こんな寸借詐欺に引っかかって情けない。」
そんないろんな思いが頭を駆け巡り、結局一晩ほとんど眠ることが出来ませんでした。
何やってんだろ?
翌朝7時、ドルフィンポートに向かいながら私の出した結論はアイツは来ない。
(むしろ来ないで欲しい。あいつの事でこれ以上悩まされたくない。)
ちんけな詐欺に引っかかったということにして忘れてしまおう。
男はドルフィンポートに現れるのか?
次回に続く・・・