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第4回 気付きの人?~彼の正体~

昨日までの風もおさまり穏やかな天候の中、主催者によるテープカットで華やかに物産イベントの幕を開けました。
これまでの開催の中で1番といっても過言ではないほど、多くの来場者で賑わっていて私は「混雑で事故になりそうにないか?」「抽選会の運営は大丈夫か?」といった点を注意しながら、会場を回っていました。
イベントが始まり1時間ほどして、私は人ごみの中に彼を見つけました。
「あいつ、本当に来たんだ!自分を騙すつもりじゃなかったのか?本当に金を返すつもりなのか?」
複雑な心境になりながら、私はわざと彼に気付かないフリをしていました。
「昨日はありがとう。本当に助かったわ。」
屈託のない笑顔で彼は、私に話し掛けてきました。
私は、昨夜悶々としたことなどおくびにも出さず
「そう。それは良かった。」
なるべく自然に(したつもり)、彼に返事しました。
彼は、昨日私からお金を借りる時点で、風邪っぽく具合が悪かったこと。
そして私と別れた後、市街地天文館の一泊5000円のホテルに泊まったこと。
そのホテルのフロントの方が、とても親切な方で彼にきめ細やかに接しただけでなく一緒に旅を続けている黒猫も部屋に入れても構わないと言ってくれ、非常に嬉しかったことなど、私に話しました。
そして少し小声で
「あんたからお金を借りた時、ホテルに行かずにどこかで野宿しようかとも思ったけど、どうも風邪を引いたのか頭は痛いし体もきつかったから、結局ホテルに泊まったんだ。でも、ホテルでゆっくり寝たせいか、体もすっかり楽になった。ほんとにあんたのおかげだ。ありがとう。」
そして
「今時間ある?ちょっとこっち来て。」
そう言うと、彼は自分の大きなバッグを置いてあるベンチに私を連れて行きました。
彼はバッグの中をごそごそと探し始めると一冊のバインダーを私に差し出しました。
バインダーをペラペラめくってみると、それは彼を取材した全国のいろんな新聞記事と、これまで出会った人からの多くの手紙やメッセージのスクラップでした。
新聞には「福祉の充実を訴え、全国行脚~云々」等の記事と一緒に確かに彼の写真も写っていました。
そして手紙も少しだけ見させてもらいましたが、彼との出会いに感謝している手紙が幾通もありました。
「昨日彼が話したことは本当だったんだ・・・」
金を借りたいばかりに言ったその場しのぎのデマカセと思っていただけに、
「ただの放浪人じゃなく、意思と目的を持って旅をしている人なんだ。」
少し彼を見る目が変わった気がしました。
「俺って以外やろう?昨日これをきちんと見せれば良かったんだろうけど。でもあんたは、俺の目を見て、話をしただけで金を貸してくれた。ホントにあんたは気持ちのある、心で話を聞く人間だよ。昨日も言ったけど、金は月曜日に送金されたらすぐに返すから・・・」
彼の言葉に
「分かってますよ。」
答えながら、
「かなり疑いはしたものの、結局困っている彼を助けることが出来てよかった・・・」
そう思いました。
その後も彼は、ドルフィンポートで足湯に使ったり、物産展の試食をしたりしながら時折私に話しかけてきました。
そうこうするうちに、彼の意外な一面というか不思議に直面することになるのでした。
次回に続く・・・