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第5回 気付きの人?~親切の連鎖反応~

物産イベントのアトラクションとしてポン菓子の実演と無料の振る舞いが行われ、会場は珍しい風景を一目見ようと、多くの人で賑わっていました。
ポン菓子は、米をポップコーンのように機械で弾くように膨らませ水あめなどで固めて食べる、昔ながらの素朴なお菓子です。
かなりの圧力をかけて作るため、出来上がるとき「ポーン」と鉄砲のような大きな音がします。
お客様の混雑を整理しながら歩いていると、一人のお坊さんに声をかけられました。
「あなたが彼に親切にし、お金まで貸してくれた方ですか?」
私は突然のことで、一瞬言葉に詰まりましたが、
「いやいや、親切というほどのことでは・・・・」
と返しながら、「なんでこのお坊さんお金を貸したことを知ってるの?」と疑問に思いました。
すると、
「実は私も全国を行脚している旅の僧です。先程、足湯の場所で彼と出会いいろんな話をしていたところ、あなたの話になったもので・・・話してみると、彼と私は出身が隣の県同士ということが分かりましてね。昨日、ずいぶん彼は困っていたらしい。すがるような思いであなたにお金を貸して欲しいと言うと、あなたは気持ちよく貸してくださった。同じ旅をする者として、困った時に助けられる時ほどありがたいものです。私からも一言お礼を言わせてください。ありがとうございます。」
と礼を言われてしまいました。
「いやいや、そんな・・・」
と慌てて手を振ると、お坊さんは続けて
「昨日は、助けられたが今晩はあてがあるのかと彼に聞いたら、『実はない』と言うもんだから、私も彼にお金を貸しましたよ・・・」
私は、「えっ!」と思うと同時に「良かった~」と思いました。確かに彼は昨夜宿泊することが出来ました。でも月曜日に送金されるとなると、今日と明日の夜はどうするんだろう?と素朴に思っていました。
「今日も金を貸してくれ」と言われても、正直持ち合わせがなくどうしようもない状況だったのです。
「困っていると誰かに助けられる、不思議な人だな~。」
お坊さんと別れてから、そんなことを考えていると彼が近づいてきました。
「さっき、旅のお坊さんに会ってアンタの話ししていたら、今夜の宿代にしなさいってお金貸してもらえたよ。」
と嬉しそうに彼は話しました。
「ホント良かったですね。」
私もなんだか自分のことのように喜んでしまいました。
そして夕方、1日目のイベントの片付けの段取りをスタッフとしていると再び彼が嬉しそうに私の所にやってきました。右手に何か紙幣らしきものを持っています。
「お金返せるよ~。」
彼は満面の笑みを浮かべながら、私に言いました。
「どうしたんですか?送金されたんですか?」
私の問いに
「いや、実はこの会場に来ている方といろんな話をしていて全国を旅してる話とかアンタの話とか・・・そしたら、アンタに金を返しなさい。残りは明日の宿代にでもしなさい。そう言って貸してくれたんだ。」
そう彼は答えました。
私は不思議な気分になりました。
本当にお金を返すような人かと言えば、正直そうは思えない感じの風体なのにこんなにも簡単にお金を貸してもらえる彼の存在って何なんだろう?
「渡る世間に鬼はなし」と言いますが、いろんな事件が横行している
昨今では、見ず知らずの人にお金を貸すなんて普通かなりの勇気がいると思うのです。
(そういう私も金を貸した一人ですが・・・)
私は、
「別に今でなくてもいいですよ。月曜日に返してもらえば・・・」
半分本心、半分試すように彼に言いました。
彼は、一瞬考えていましたが、
「いや、きちんと今返しておきたい。あんたとは友人でいたいから。」
そう言って、私にお金を渡しました。
彼にお金を貸してから、戻ってくるまでの24時間。たったの1日なのに、私の中ではいろんな事を考えさせられる1日となりました。

特に考えさせられたのは、
「人を信じるとはどういうことか。人との出会いとは何か。」
ということです。
人には、それぞれの歩んできた足跡や経験があり、その中で一つの価値の判断基準のようなものを培っているのではないでしょうか。
そして、人生の中で人と出会った時、その判断基準の中で
「この人は良い人のようだ。」「信用できそうにない。」
といった判断を自分自身の中で行っているのです。
特にその中でも初対面で「信用できそうだな。」とか「好感を持てる。」と感じるときは、その人の中に何らかの担保のようなものを感じることができるからだと思うのです。
それは意外と簡単なもので、服装などの身なり、人相、持ち物といった外見的なもののような気がします。
つまり、まず外見的な担保(身なり、人相などが自分の判断基準に満たされている)を確認した上で相手と話をすることで、相手の考えを素直に聞けたり、共感できたりするのではないかと思うのです。
「外見で人を判断するのは良くない」などと言われたりしますが、実は本当に難しいことのような気がしました。
(この事自体も、彼がお金を返したことによって感じたにすぎませんが・・・)
何だか彼に試された24時間のような気がしました。
こんな経験なかなか無いな。と思っていると更なる課題を彼から与えられることになるのです。
次回に続く・・・